あとで考えます

ブログでやれ的な話

22/7はあの時ラブライブがやりきれなかったことをやってるのかもしれない、という話

少女☆歌劇レヴュースタァライト、面白いですね!

ブシロだし歌やステージといったリアル展開を強くアピールしていたこともあって、「バンドリに続くポストラブライブの変化球なのかな」と勝手に思って当初スルーしていたのですが、アニメが話題になってきたあたりで見てみると2次元アイドルをはじめとする所謂ウタもの作品や学園・部活ものだけでなく、変身・バトルロイヤル・ループ・百合といった様々な作品のエッセンスが注ぎ込まれてレヴュースタァライトとしか表しようの無い作品になっており、大袈裟だけど平成最後の夏に相応しい傑作なのではと言う感じで完全に引き込まれてしまいました。こうなると舞台版はアニメとどういう関係性になっているのか気になってきてしまうので、なんと言うか我ながら人間が単純に出来てるなと思いました。

 

勝手な思い込みで自分の目で見ないでものを判断するのは愚かだし、機会損失に繋がると常々思ってはいるのですがなかなか難しかったりしますね。なのでこの機会になんとなくスルーしつつ周りの意見に賛同するという最高にダサい触れ方をしていた「22/7」をチェックしてみることにしました。

22/7(ナナブンノニジュウニ)は、日本のデジタル女性アイドルグループである。秋元康のプロデュースにより、2016年12月24日に誕生した。また、ソニーグループのアニプレックスソニー・ミュージックレコーズがタッグを組んでいる。22/7 (アイドル) - Wikipedia

 秋元康が昨今のブームの後追いのように着手したプロジェクトだからなのか、なんとなく食指が動かず放ったらかしにしており、キャスト自身によるモーションキャプチャーを売りにしたプロモーションビデオもCGの精度が先行コンテンツに追いついていないイメージで周りからもあまりいい感想は出ていないな、という印象でした。こんなに坂シリーズに近い路線なのであれば(これは今、秋元康がプロデュースするという、根底にあるアイデンティティを思うと仕方のないことではあるのだけど)実在のアイドルの方を追いかければいいのでは?という意見も結構見かけました。

まあそんな評価になんとなく自分も賛同していましたが、結局ちゃんと自分の目で見ておりませんでしたので、PVを見てみました。というわけで今回は、映像面以外でファン向けにどのような活動を行なっているのか、というのはとりあえず置いといて、PVに対する感想のお話です。

 

youtu.be22/7 『シャンプーの匂いがした』music video フルver. - YouTube

22/7 『理解者』music video - YouTube

 

この手の2次元アイドルではそれ自体が商材となるフルサイズPVが公式に無料公開されている!という驚きはさておき、確かに「良くも悪くも坂シリーズみたいな楽曲」「モーションキャプチャーで個々に揺らぎが生まれたけど振り付けの方向性は動きの統一感を重視している」「妙に人間的でリアルな動きだけど頭身がアニメなのでなんか変」「個人的にそんなにキャラデザに魅力を感じない」といったネガティブな印象は確かにあったのですが、それを上回るほど非常に感心したポイントが一つ、「終始、アイドルのミュージックビデオとして作られている」というところです。

ここ10年の2次元アイドルが歌って踊る映像、ある種始祖的な存在であるアイマスシリーズからして元々が「ゲームのライブパート」だからなのか、題材的にスターダムに上り詰めていく物語を追う中で描かれることが常だからか、「劇中世界のライブシーンを映像で表現する」というのが主流になっています。先日話題となったカレーメシのアイマスコラボムービーも演出がアニメ的ではあるものの、ライブで歌い踊るアイドル(とカレーメシくん)を描いたものになっていますね。

 

そんな中、異彩を放っていたと思うのがラブライブ!僕らのLIVE 君とのLIFE」のミュージックビデオです。このPVは彼女たちの始まりの物語を描いているように見えて、当時のAKB楽曲のPVを思わせる描写や演出を盛り込んで作られており、ろくすっぽ背景も持たない架空のアイドルグループのミュージックビデオとして割と狂気を感じる熱量で作られていました。そもそもミュージックビデオってライブ映像と何が違うんだ?という疑問についてはアイカツ!第90話「ひらめく☆未来ガール」をご覧いただければと思います。

 

youtu.be

【参考】

【MV full】 大声ダイヤモンド / AKB48 [公式] - YouTube

【MV full】 言い訳Maybe / AKB48 [公式] - YouTube

【MV full】 10年桜 / AKB48 [公式] - YouTube

 

ラブライブ!初期にはキャラクターが実在するアイドルのように振る舞うという方向性があって、それこそ「作品世界の中のアイドル」というよりミュージックビデオも作られた藤崎詩織から繋がる「バーチャルアイドル」的な魅力があったと思います。

シリーズアニメ化とそのヒットと共に、キャラクターたちは画面の向こうに広がる明確なストーリーの中を生きることになり、現実世界でのアイドル性はそのキャラクターの文脈を背負ったキャストが担うというスタイルは沢山の奇跡を生むことになった訳ですが、これがジャンル全体でもはや呪いのように定番化している状況ですね。

その一方でラブライブ!シリーズの重要要素であったミュージックビデオについては、初期からのアイドルのPVという因子と、劇中のライブなのかイメージ映像なのか判然としない独特のミュージカル的な演出が絡み合い、ラブライブ!のPVとしか例えようのないものに変化しながら受け継がれていますが…。

 

話が逸れましたが22/7のPVは、現実には難しい長回しやアングルだったり、絶対出来ないようなロケ地だったりとCGだからこその要素を盛り込みつつ、過剰にキャラクター性やPV外のストーリー、文脈を持ち込まず「アイドルが登場する作品の成果物」ではなく「CGで表現されたアイドルのPV」という独立した一作品として制作されています。

折角キャラクターとして生み出されているのに(最近は関係性が重要視されているし)それを生かした描写が少ないとか、音楽性とかが従来の2次元アイドルファンの期待されるものなのかは分からないですが、「アイドルを題材としたコンテンツ」ではなく「2次元を表現方法に選択したアイドルグループ」として見ればやり方は大正解なのではないでしょうか。

彼女たちは冠番組でもモーションキャプチャーを使ってCGで出演しているそうですね。キャラクターや作品の看板を背負ってキャストが顔出しで活躍すること・キャストとキャラクターが同格の存在として2人3脚で活動していくことが(それはそれで素晴らしいとして)他に選択肢がないかのように当然のものとなっていたところに、Vtuberの流れを汲むものではあるのでしょうがこう真面目に「2次元アイドル」をやられてしまうと自分のこのジャンルに対してのオタクとしての初心はどこにあったのか、ハッとさせられるものがあります。(Vutuber、ラブライブ!初期にことほのうみとかでやられてたらどハマりした手法だと思う一方、あれはあれだからああなったんだよなという言葉にできない複雑な気持ちがあったりします)

もちろん顔出しのイベント展開もしているでしょうし、中々維持するのが難しい路線だとは思うのですが、なんとなく未見で抱いていたのとは違う評価に落ち着いたのでした。

 

最後は別件ですが、PVが面白いなと思ったのはHop! Step! Sing!ですね。VRを取り入れた2次元アイドルということで、ライブ映像を観客視点で見る感じのやつかなと思ったんですが(これはこれで非常に需要のある方向性だとは思います)まさかの自分がミュージックビデオの中に入り込むような表現の映像になっています。

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これは実写よりCGだからやりやすかった部分もあるとは思うのですが、2次元アイドル云々というのを抜きにミュージックビデオとしてめちゃくちゃ面白いやり方だと思います。VRを活かした映像表現は中々難しいところもあるのかな、と現実のアーティストのPVを見てても思うのですがこのVRカメラ長回し一発撮りみたいなのは今後一般に増えそうな方向性な気がします。それ故に既存のアイドルものやアニメの映像表現といった限定された範囲と結び付けて考えるのは結構難しくて、ジャンル作品としての語り口に悩むところではあるのですが。

 

追申

今回アイドルものメインだったので外しましたけどバンドリも作画的見所な演奏シーンを延々と流すやつから、Neo-Aspectとかスギちゃんみたいなやつとか結構PVっぽくなってきて、なおかつ演者に本当に楽器やらせるというえげつない感じに複合的なことやっててすげえなと思ってたりします